サステナブルニュース

【メディア掲載情報】ファッション専門メディア「WWDJAPAN」のウェブ版に掲載されました。
2023/04/03

センコーグループが2022年11月にオープンしたサステナブルEC事業「ZEROBRANDs」。ゼロブランズ社長を務める小林治彦センコー執行役員ロジスティクス営業本部副本部長のインタビュー「アパレル物流トップのセンコーが廃棄ゼロを目指すEC事業を始めるワケ」がファッション週刊紙「WWDJAPAN」のウェブ版に掲載されました。 「WWDJAPAN」は1910年に米国のフェアチャイルド社が創刊したNY発の「WWD(Women’s Wear Daily)」の日本版ファッション業界専門メディアで、毎週月曜日発行の週刊タブロイド紙と、ウェブ版「WWDJAPAN Digital」を展開しています。 ▼記事全文はこちらから読めます。 https://www.wwdjapan.com/articles/1461140  ここでは、取材・執筆を担当した筆者が、内容を再編集して紹介します。 センコーグループホールディングス(HD)傘下で、ファッション物流最大手のセンコーが、アパレルの在庫ロス削減と廃棄ゼロを支援する循環型のファッション・サステナブル・プラットフォーム「ZEROBRANDs(ゼロブランズ)」を構築する。子会社ゼロブランズを8月に設立し、11月15日に余剰在庫品を中心に新価格で再販する社内向けのクローズドECサイトをオープンする。廃棄予定品は買い取ってリメイクしたり、再資源化するなどまとめて効率的にリサイクルさせる。中古品を扱う2次流通が増える中で、物流のノウハウを生かして、余剰在庫品や返品商品などを回収・再販する「1.5次流通」とも呼べる静脈物流を確立。来年には一般向け販売や古着回収も予定する。センコー執行役員ロジスティクス営業本部副本部長であり、ゼロブランズ社長を兼任する小林治彦氏に、新事業に賭ける思いやビジネス構想を聞いた。

Q:センコーグループHDの概要と、ファッション物流業界トップの根拠は?

小林治彦ゼロブランズ社長:東証プライムに上場する総合物流企業で、年間売上高は6231億円 ( 2022年3月期 )。中核企業のセンコーに加え、東京納品代行、M&Aによりグループ入りしたアクロストランスポート(元オンワード物流)や江坂運輸(元阪急百貨店系)など、国内外にグループ161社を有している。ファッション物流の年間売上高は495億円、商品取扱規模は小売価格換算で約1兆円。国内アパレルの小売り市場規模推計7兆5000億円に対して、日本のファッション商材の約13%(金額ベース)を扱っている。

Q:ファッション系の主な取引先は?

小林社長:百貨店やショッピングモール、路面店、ECなどの販売網を持つ大手アパレルやセレクトショップ、ラグジュアリーブランド、インポートブランド、そしてスポーツブランドなどを物流面で支えさせていただいている。それらの企業の倉庫や商業施設、店舗に常時配送をしている状態で、帰りの便に載せる静脈物流を活用することや、データ連携をすることで、環境負荷を低減して効率的に循環型事業ができることになる。

Q:センコーのファッション物流サービスの特徴とは?

小林社長:ファッションの生産物流から販売物流まで、一貫物流サービスを提供している点だ。「海外生産地からのフォワーディングサービス」「ファッションロジスティクスセンターの運営」「商品の集荷・全国店舗への配送」などを提供している。特に「ファッションロジスティクスセンターの運営」では、商品やハンガーの保管、繊維製品品質管理士(TES)や衣料管理士たちによる商品の検品、補修、洗濯タグの発行・取付、店舗納品のための流通加工、たとえば値札の発行・取付なども行っている。EC出荷の梱包・ささげ・コールセンター等のECフルフィルメントサービスや、静脈物流として店舗やECの返品、社員セールや催事への出荷なども手がけている。WMS(倉庫管理システム)ではパッケージソフトを使うところが多いが、センコーグループ独自のファッションクラウドWMSを構築して共通利用しているのも特徴だ。

Q:「ゼロブランズ」では物流×サステナビリティによる新たな循環型事業を展開するというが、センコーではこれまでどのようなサステナブル物流に取り組んできたのか?

小林社長:3つ挙げるとしたら、1つ目はEVトラックによる配送で、2019年7月に「ルイ・ヴィトン」の都内配送を開始して以来、ラグジュアリーブランドを中心に取り組みが広がっている。2つ目はオンワードHDと三陽商会と共同して、包装ビニール袋を回収してプラスチック容器にリサイクルするなど、資源循環に取り組んでおり、推進参画企業が増えつつある。3つ目は循環型経済の構築を支援する静脈物流サービスの提供だ。三菱商事によるレンタル商品・EC商品の返却・返品サービス「SMARI(スマリ)」の物流業務を昨年11月から開始。ローソンへの通常配送車両が「スマリボックス」から回収した返品・返却品を帰りに載せて運んで物流センターに集約し、各EC事業者に配送する。既存物流網を活用することで物流コストの抑制と、低・脱炭素につながるグリーン物流化を図っている。

Q:新会社ゼロブランズに込めた思いとは?

小林社長:新会社ゼロブランズの社名の“ゼロ”は、廃棄ゼロの実現、ゼロからのスタート、循環・サーキュラーの輪を表している。“ブランズ”には信頼ある、価値ある商品・企業であるという意味を込めた。我々は生産地から日本の物流倉庫、さらに店舗網をカバーする輸送網を世界規模、全国規模で構築し、日本国内のファッション物流の約10~15%を担う1次流通の基幹ハブとなっている。これまで培ってきたプラットフォームやネットワーク、人材、財力、中立性、信用力を生かして、主旨に賛同いただいた企業との協働で、商品廃棄ゼロの循環型のファッション・サステナブル・プラットフォームを構築したい。 「シン流通」とも言える「1.5次流通」を実現し、日本のファッション産業全体のサステナビリティ推進を目指したい。物流会社なのに、なるべく動かさない、Don’t Moveの精神で、服の状態でトコトン売り切り、全量循環させていく。ECサイトに加え、サステナブル関連のニュースなどを集めたオウンドメディアから情報発信も行っていく。

Q:新たにファッション・サステナブル・プラットフォームを創るきっかけと狙いは?

小林社長:自社の倉庫で大切な商品をお預かりしたり運んだりしたりする中で、たびたび商品が廃棄されるシーンを見て、ずっともったいないという声が挙がっていた。サステナビリティのニーズの高まりはもちろんのこと、コロナ禍や原材料や物流費などのコスト上昇などで、在庫の適正化に取り組む企業も増えているが、セールやアウトレットを行っても残ってしまう商品はどうしても発生する。また、ECが台頭する中で返品が増え、滞留してしまって売り時を逃してしまうものもある。そんな中で、余剰在庫品や不良在庫、返品商品などを集めて新価格で販売するECを作って、極力モノを動かさずにデータをつないでユーザーに販売することができれば、CO2排出も削減でき、取引先の方々の課題解決にもつなげられると考えた。 洋服として生まれてきた以上はそのまま販売するのが一番のサステナブルだと思っている。なるべくもとの形のまま販売したい。ただし、店頭で販売したり、店舗やECで販売して返品された際に、キズや汚れ、焼けなどが発生して、そのままでは売れない不良品はどうしても発生してしまうもの。それをわれわれが買い取って、回収して、すでに機能を有している品質チェックや修理、リメイク・リフォーメーションを施して、再び販売できる状況に生き返らせることができる。 修復不可能なものは、リサイクル会社とネットワークを構築し、まとめてリサイクルしていく。個別ではかさみがちな費用の負担軽減や、量が足りなくてリサイクルできないという状況を解決して、循環型を推進し、CO2削減にも寄与させたい。

Q:2022年11月15日にスタートしたECサイト「ZEROBRANDs」の詳細は?

小林社長:スタート時には、有名セレクトショップや大手アパレルなど5社・21ブランドに協力いただき、1000~1500アイテムを販売する。平均の元値は2万円で、質の高さも特徴だ。まずはセンコーグループ161社のグループの社員に向けてクローズドサイトで販売する。約10万人いるので、廃棄ゼロに向けた購買力にも期待したいし、UI/UXなども検証し改善していきたい。クローズドサイトの中でも、社員だけが限定して買えるものと、パートやアルバイトで働いてくださってる方々まで購入できるものなど、閲覧、購入ができる範囲を各企業と各々設定したり、購入者には登録時に誓約書へのチェックを求め、ネームバリューやブランド価値を守っていく。どれを買っても廃棄から服を救うサステナブルな行動につながるし、今まで定価やセールでも手が出なかったブランドのアイテムを購入して身に着けることで、そのブランドや商品の良さに気付き、ファンになるきっかけにもしていきたい。 来年(予定)には一般向け販売を開始する予定だ。その際にも、クローズドで販売したり、その取引先の社員や関係者に限定したファミリーセールサイト的な販売にするなど、公開範囲(購入可能対象者)を自由に設定できるオプションを設けていく。

Q:取引先からの調達条件は?

小林社長:データ連携して委託販売させていただくケースや、買い取らせていただくケース、そのままの形状で販売するケースやネームタグを外すケースなどいろいろ選んでいただける。テキスタイルやB品、不良品などについては無料で回収することも。今まで廃棄にかかっていた費用の削減と環境負荷の削減の両方でお役に立ちたい。 とくに商談を通じてわかったのが、外資系ブランドからもニーズが高いということだ。ラグジュアリーブランドやライセンスブランドなどでは、本国のアプルーバルが必要になるので交渉に時間がかかるが、ブランドを毀損せず、しかも日本のローカル内で消化・解決することが求められる中で、今回の「ZEROBRANDs」のECサイトや循環型モデルなどに高い関心や期待を寄せていただいていると感じている。

Q:リメイク・リフォーメーションや、リサイクルの部分の構想は?

小林社長:社内にいる繊維製品品質管理士(TES)の資格保有者や服飾系専門学校卒業生などでリメイクやリフォーメーションを行ったり、クリエイターの方々との協業も構想中だ。ブランドと協力してテキスタイルなどを専門学校に寄付することも検討する。リサイクル分野ではBPラボや「パネコ」を手がけるワークスタジオなど外部と連携していく。カシミヤやウールの再生素材化や、什器やボード化などから着手し、再資源化を図り、単純廃棄をゼロにしていく。環境やサステナブルに対して同じ思いや技術を持つ企業と手を組んでいきたい。