サステナブルニュース

生活者はサステナブルな商品を購入したいのか?注目の消費者意識調査まとめ
2023/12/07
FaWのサステナブルファッションEXPOより  廃棄物の削減や脱カーボン(CO2排出削減)、脱プラスチックといった環境配慮や、人道的観点や動物福祉といったエシカル(倫理的)な商品調達など、サステナブルな商品を製造・販売することが企業にますます求められています。SDGs(持続可能な開発目標)についても広く啓蒙され、生活者の意識や購買行動にも変化が生じていると言われています。 そんな中で、生活者のサステナビリティやサステナブル消費にまつわる調査レポートも多く発行されています。 最初に紹介するのが、サステナブル領域での先駆的コンサルティングファームのPwCによる「新たな価値を目指して サステナビリティに関する消費者調査2022」です。 https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/consumer-survey-on-sustainability2022.html アメリカ、イギリス、中国、日本で調査を行い、世界のサステナブル市場動向の中で、日本が置かれた現状や課題などを浮き彫りにしています。サステナブルな商品の購入を阻んでいる要因として、「価格とアクセシビリティ」「情報媒体の偏り」「商品購入を通じてサステナビリティに貢献するという行動の広がりが不足していること」などを挙げています。課題を明示するとともに、ビジネスチャンスを見つけるヒントにもなるため、ぜひお読みいただければと思います。 次に紹介するのが、デロイトトーマツが46カ国のZ世代1万4808人、ミレニアル世代8412人を対象に行った「Z・ミレニアル世代年次調査」です。 https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/jp/Documents/about-deloitte/about-deloitte-japan/jp-group-genzmillennialsurvey-2022-global.pdf サステナビリティだけに特化した調査ではないのですが、「不安の時代でも、変革のために声を上げる」というレポートの副題や、「日常生活で抱えている困難」と、「社会の変化を後押ししたいという欲求」を両立させようと懸命に努力している姿が見て取れる――という言及には、ちょっと胸を打たれ、サステナビリティの推進の重要性を改めて痛感させられます。 ちなみに、対象者の9割は環境負荷を軽減するための行動を取っており、Z世代の64%が「価格が高くても環境的にサステナブルな商品を購入する」と回答。「サステナブルではない低価格の商品を購入する」人は36%にとどまりました。特筆事項は、企業や自分の勤務先に対し、取り組みを今以上に充実させてほしいと考えている人々が多いこと。「勤務先の組織は気候変動との闘いに強い責任を持って取り組んでいる」と答えたのは、Z世代の18%、ミレニアル世代の16%のみ。勤務先に、従業員も参加可能な取り組みを推進するよう求めており、使い捨てプラスチック製品の使用禁止や環境問題に関してより良い意思決定をするための研修などを例に挙げています。 こちらは英文なのですが、マッキンゼーがニールセンIQと実施したサステナビリティ調査レポートにまつわる記事2本です。 Consumers care about sustainability and back it up with their wallets (訳:消費者は持続可能性を重視しており、財布でサポートしています) https://www.mckinsey.com/industries/consumer-packaged-goods/our-insights/consumers-care-about-sustainability-and-back-it-up-with-their-wallets Consumers are in fact buying sustainable goods: Highlights from new research (訳:消費者は実際に持続可能な商品を購入している: 新しい調査のハイライト) https://www.mckinsey.com/industries/consumer-packaged-goods/our-insights/consumers-are-in-fact-buying-sustainable-goods-highlights-from-new-research 両社は、4万4000ブランドの32 の CPG カテゴリーの 60万 SKU を対象に、5年間にわたる米国売上げデータを調査しています。そして、多くのカテゴリーで、商品のパッケージでサステナビリティ関連について主張することと、売上高との間に明確かつ実質的な相関関係があることが実証されたといいます。 新しいことに挑戦しやすい小規模ブランドやスタートアップだけでなく、大企業での取り組みが広がり、ビジネスチャンスになっていること。商品のパッケージなどにESGやサステナブル商材であることを明示することの重要性なども指摘しています。サステナブル商材は往々にして価格が高くなりがちですが、「価格プレミアムを詳しく調査したところ、持続可能性に関して調査した全カテゴリーで、16~35 %の範囲で価格が許容されると指摘しています。 日本の調査では、「博報堂SDGsプロジェクト」が昨年、16~79歳の男女5158人に行った「生活者のサステナブル購買行動調査2022」に注目したいと思います。 https://www.hakuhodo.co.jp/news/newsrelease/99783/ 「買い物の際に環境・社会に与える影響をどの程度意識しているか」を10点満点で尋ねたところ、実は最も意識が高かったのはシニア層で、70代が平均5.84点、60代が5.26点だったという結果が出ました。70代のサステナブル購買行動の実施率は全般的に高く、特に「環境や社会に悪い影響を与える商品は買わない」(75.3%)、「環境や社会に悪い影響を与える企業の商品は買わない」(70.4%)などは全体より20ポイント近く高くなっていました。 巷間、Z世代を中心とした若者世代の意識の高さが指摘される通り、10代(16~19歳)も平均5.05点と高め立ったのですが、残念なことに、「まったく意識していない」割合も高く、環境・社会意識が高い層と低い層で両極化の傾向があると指摘しています。そして、全年代の中でサステナブルな購買意欲が最も低いのはミドル層で、30代が4.74点、40代が4.79点でした。子育て世代、就職氷河期時代に合致してしまっているようですね。 一方、SHIBUYA109 lab.(シブヤイチマルキューラボ)は昨年、15~24歳の男女各200人・計400人に「Z世代のSDGsと消費に関する意識調査」を行いました。 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000182.000033586.html 「SDGsや社会的課題の観点から商品を購入したことはあるか」という質問では、「購入経験有」が50.1%と半数を占めました。理由の上位は「地球や社会に良いことをしたいから」(45.5%)、「節約になるから」(32.0%)、「似た商品で迷ったので、少しでも地域や社会に良い方がいいと思ったから」(28.5%)で、積極的にSDGs商品を選ぶだけでなく、迷った際の購入基準となっていることがわかります。また、購入経験ありのうちの28.3%は「意識して買ったことはないが、たまたまそうだった」とのことでしたが、購入後にSDGsへの取り組みを知り、ブランドへの愛着が深まる例が見られたということです。未来の顧客層となるZ世代に向けた施策のヒントになるかもしれませんね。